2022年10月21日に 、向井助教と東北大・量子科学技術研究開発機構(QST)の共同研究の成果についてのプレス発表を行いました。
成果の概要
ベリリウム(Be)は原子番号4番の軽金属で、高融点、高剛性、高熱伝導など優れた性能をもっていることが知られており、将来的な非炭素電源として期待される核融合炉では、燃料生産の効率化のためにベリリウムを主成分とする金属間化合物が使われます。
軽元素のベリリウム(Be)を主成分とする金属間化合物の空孔生成や水素固溶に相関を持つ電子的記述子を明らかにしました。 向井助教、笠田竜太 東北大学教授、金宰煥 量子科学技術研究開発機構博士、中道勝 同博士らの共同研究です。
材料を効率的に探索する手法として、近年マテリアルズインフォマティクスが注目を集めています。材料探索において材料の特性と強い相関を持った記述子が重要となりますが、軽元素を主成分とするBeの化合物に対して有効な記述子はこれまでに明らかにされていませんでした。
本研究ではBe金属間化合物42種を対象に密度汎関数理論に基づく第一原理計算を実施し、空孔生成や水素固溶に相関を持つ記述子を探索しました。この結果、占有pバンド中心がこれらの特性と強い相関を持つことを明らかにし、本記述子は高い精度で実験的に評価できることを示しました。
情報駆動型の材料開発により、目的の物性と資源量のバランスを考えた材料設計を行うことで、核融合用のベリリウム機能材料の開発を加速させられると期待されます。今後の研究では様々な物性と強く関連した記述子の探索を進め、高機能なベリリウム化合物の開発に貢献したいと考えています。
本研究成果は、2022年10月13日に、国際学術誌「Acta Materialia」にオンライン掲載されました。
論文情報
タイトル:Electronic descriptors for vacancy formation and hydrogen solution in Be-rich intermetallics(ベリリウムリッチ金属間化合物の欠陥生成と水素固溶に関する電子的記述子)
著 者:Keisuke Mukai, Ryuta Kasada, Jae-Hwan Kim, Masaru Nakamichi
掲 載 誌:Acta Materialia
DOI: 10.1016/j.actamat.2022.118428
研究プロジェクトについて
本研究は、京都大学エネルギー理工学研究所と東北大学金属材料研究所、量子科学技術研究開発機構の共同研究であり、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)(共創分野:育成型)」(JPMJPF2002)、科学研究費補助金・若手研究(20K1442)、京都大学エネルギー理工学研究所・ゼロエミッションエネルギー研究拠点(ZE2022A-36, ZE2021A-42, ZE2020A-35)のサポートを受けて実施されました。
プレスリリース
【PDF】軽元素材料の特性を予測する電子的記述子を発見―情報駆動型の材料開発に道筋―
メディア掲載情報
- 日刊工業新聞 10月25日 27面 「京大など、ベリリウム金属間化合物の特性簡単予測 電子的記述子「占有pバンド中心」発見」
- Tech+(マイナビ) 「京大など、ベリリウムを含む化合物の特性を予測する「電子的記述子」を発見」2022年10月24日