留学日記 前編(D2:坂部俊郞)

写真 1 雪化粧のKillian CourtならびにGreat Dome(MIT)。とても幻想的な光景でした。

こんにちは!八木研究室の博士後期課程2年の坂部俊郞です。

文部科学省国際原子力人材育成イニシアティブ事業 原子力イノベーター養成プログラム(NICP)」(東京工業大学)より留学費用をご支援いただき、2022年12月より、マサチューセッツ工科大学(MIT)のPlasma Science and Fusion Center(PSFC)に留学中です。2022年12月から2023年3月下旬までの約4か月間滞在する予定です。

Dennis Whyte教授のチームで、先進的な溶融塩ブランケットシステムの研究開発のためのニュートロニクス(中性子工学)に関する研究に従事しております。

私は、何を思ったか、30代になってから、勤めていた会社を退職し、「核融合反応を起こしてみたいな!」という淡い気持ちで、博士後期課程に進学(世界はそれを退職D進と呼ぶそうですね…)したという無鉄砲な人間なのですが、博士後期課程に進学した頃は海外の大学に留学することなど、全く想像もしていませんでした。

現在、アメリカのマサチューセッツ州に来て、様々な方と交流しながら日々を過ごしていると、人生における邂逅というものは極めて不思議なものだなと常々感じております。本当に貴重な経験をさせて頂いていると思います。今回の留学の後押しをしてくださった皆様には、深い感謝を申し上げたいと思います。

さて、今回は、MITでの研究生活ならびに米国の中でも指折りの観光都市でもあるボストンでの生活について、僭越ながら、ほんの少しだけ、紹介いたします。

…というわけで書き始めたのですが、書き始めると書きたいことがたくさん出てきたので、前後編の二部構成でお送りしたいと思います。

前編では主にMITキャンパスや研究生活について、後編ではボストンでの生活について、紹介いたします。

MITについて

MITはアメリカ北東部のマサチューセッツ州ケンブリッジに位置する私立工科大学です。言わずと知れた全米屈指の名門大学で、不朽の名作として誉れ高い映画グッド・ウィル・ハンティングの舞台にもなっている大学ですね。MITのプロフィールや功績について、私などがわざわざ説明する必要はないと思いますが、実際に来て印象に感じたことを一つだけ書き記したいと思います。

こちらに来て、非常に強く感じたことは、MITが地域社会から洗練された存在として認識されている(ように感じられる)ということです。端的に言えば、「オシャレでスタイリッシュな存在」として認知されているように見受けられます。町を歩いていると、MITを標榜するものを身に付けている方をよく見かけ、地域から愛されているのだなと肌で実感しております。このような、MITに対する地域社会の受容の在り方は、大学と一般社会の関係において理想的なものではないかと思います。このような社会的受容性の高さが回り回って、MITの高い研究力に繋がっているのかもしれません。研究者のアウトリーチ活動の目指すべきものがここにあるように感じます。

余談ですが、大学生協ストアの充実ぶりには目を見張るものがありますね。生協ストアに行くと、買いたいものがたくさん目に付いて、なかなか決められないですね。笑

写真 2  MITのCOOPストア。有名スポーツブランドとのコラボ商品も多数。

キャンパス

キャンパス内は、荘厳な建物や奇抜な建物、芸術性の高いモニュメントで埋め尽くされており、視覚的に飽きることがありません。キャンパス全体が大きな博物館のようであると言ってもよいと思います。ただ、ウロウロ歩いているだけで、非常に楽しいです。

あと、キャンパス内には、バナナラウンジという無料でバナナを食べることができるラウンジがあるのも大変有難いです。頻繁にバナナを頂いております(この記事もバナナラウンジのデスクで書きました)。

写真 3 Stratton Student Center。生協ショップやATM、美味しい飲食店が中に入っています。手前のモニュメントは、Alchemistという名前だそうです。

写真 4 The MIT Banana Lounge。いつでもバナナが無料で食べられる素敵な場所。可愛い絵がたくさん飾られています。たまに休憩中の方のイビキが聞こえてくることも…。

写真 5 MITのキャンパス中でも一際目立つRay and Maria Stata Center。コンピュータサイエンスとAIの研究所だそうです。絵葉書にもなっている有名な建築物ですね。

PSFCでの研究活動

現在は、日々、MITのPSFCの建屋で、ニュートロニクスに関する実験やシミュレーションを行っております。研究所では、研究プロジェクトごとにチームが分けられており、私が所属しているチームには現在十数名ほどの研究者や学生が所属しています。教授や准教授の先生を中心にチーム編成(研究室編成)が行われていることが多い日本の大学の研究室とは少し違うシステムだと思います。どちらの方式にも良い面があり、特に甲乙つける必要もないと思いますが、PSFCの仕組みは目標達成のために効率よく円滑にプロジェクトを推進していく上では非常に良い仕組みだと感じています。それでいて、新しい理論や手法を柔軟に受け入れる土壌や、自由に意見を組みかわすことができる土壌が確立されているようで、組織としての完成度の高さに毎日感銘を受けております。SPARCARCといった革新的な設計思想に基づく核融合炉の実現という大きな目標を共有していることも、個々の研究テーマの方向付けに良い影響を与えているように感じます。

今回は4か月程度の短期滞在なので、きちんとデータを取得することができるか不安だったのですが、無事に実験を始めることができて、ひとまず安心しております。意思決定が迅速で、何でも意欲的にチャレンジしてみよう、というPSFCの環境にただただ感謝です。また、MITの方々もよく日本の核融合研究の成果をチェックしているようで、日本人である私が日本での研究についてMITのメンバーから教えて頂くこともしばしばです。MITに来て、京都大学や日本の研究機関における研究活動の価値も今まで以上に理解できるようになったと感じています。

最新鋭の設備で実験できることも非常に良い経験になっておりますし、日々のミーティングやコーヒースペースでの議論も刺激的で、毎日PSFCの建屋に行くのがとても楽しみで仕方ないですね。

あと、Alcator C-mod核融合炉用の高温超伝導コイルなど、核融合科学史に残る偉大な装置を見学できたのも感無量でした!

現在の人類の叡智と夢がぎっしり詰まった素晴らしい分野なんだなということを少しずつ実感できるようになってきて、核融合の世界に“チョット”興味が湧いてきました。

これからもより一層精進していきます!

写真 6 PSFCの建屋外観。FUSIONの文字が大々的に一般道に向けてアピールされています。

前編は以上です。ここまで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました!

後編に続きます!後編では、ボストンでの生活について記したいと思います。

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